Column

コラム

《2024年度版》予備校メック流
医学生のためのオススメ勉強法はコレだ!
「第23回:臨床問題の苦手意識を克服しよう!」

2024.08.05

医学生の皆さまこんにちは!

予備校メックのラーニングインストラクター(L.I)「L.I Nisshy」です!

暑さ極まれり。全国津々浦々、燃え上がっていそうな2024夏。暑い、と口にするのすらもううんざりですが、皆さんは元気にお過ごしでしょうか。

さて今回のコラムは「臨床問題について」。皆さま、臨床問題は得意ですか?
「苦手だよぉ~(´;ω;`)」って心の中で叫んだ方のほうが多いかもしれませんね。
医師国家試験の対策・学習で避けては通れない臨床問題。
Nisshyがこれまで個別指導や学習相談でお会いした医学生やメック生でも、臨床問題を苦手としている方はとても多い印象です。
そして、苦手としている方には、以下2つの傾向があるようようです。

最後まで問題文を読まずに、キーワード1つのみで判断してしまう

暗記すればなんとかなると信じている

どうでしょう、思い当たる方はいませんか?

・①について
1つのキーワードで判断できれば解答スピードも上がり楽なのですが、全ての問題がそれで解けるわけはありません。また、この癖がついてしまうと軌道修正がなかなか難しいというのもNisshyが感じているところ。

・②について
臨床問題は暗記だけでなんとかなるという問題ではなく、また、とにかく問題をひたすら解いて、問題と答えをまるごと覚えてしまおう!と、間違った方向に努力されている方が多い……(>~<;)

じゃあ臨床問題って一体どう対策すれば良いの?って思いますよね。
大丈夫です。このコラムを最後までお読みいただけば、きっと臨床問題の苦手意識を克服できると思いますので、ぜひ最後までお付き合いいただけると嬉しいです!

臨床問題の対策法を伝授してくれるのは、メック生向けの補講 Supplement 講義で学生からの信頼が厚く、毎年、個別指導でも多くの学生様を合格に導いた実績のあるメック講師、Dr.丸木です。
これを読んで対策していただければ、もう臨床問題なんか怖くない!💪
6年生以外の医学生の皆さまもぜひ参考にしてみてください!

第23回:臨床問題の苦手意識を克服しよう!

Dr.丸木
医学部卒業後、救急総合診療科にて勤務。その後、メック講師として活躍中。
現在は大阪校を中心に年間500件以上の個別指導を担当。多くの医学生を進級試験や卒業試験合格に導いた実績多数。病態生理から理解できる理論的な指導に定評がある。
1つの問題から得るべき周辺知識の解説やカリキュラム講義では解説していない問題も取り扱い、知識の幅を広げる「Supplement」補講講義担当。

臨床問題の学習方法

臨床問題はSTEP1→STEP2の流れで習熟してみましょう!
まずは夏までにSTEP1でしっかり解けるように学習し、次にご自身の学習状況と理解度に応じて、秋以降はSTEP2の習熟を目指すことをおススメします!
注意点も挙げておりますので、しっかりチェックしてみてください。

STEP1|画像で解く、キーワードで解く

試験対策学習の初期はまだ各疾患の臨床像が固まっておらず、どうしても特異度の高い情報に目が向きがち。
特異度の高い情報というのは簡単にいうと「この検査所見ならこの疾患」「この画像ならこの疾患」とすぐに判断できる情報のこと。特異度の高い情報の習得のみ済んでいる方はこの方法を取ると思います。
まずは画像から、もしくは問題文の下のほうに注目して、解答を導き出します。
夏まではこの方法で十分に習熟し、疾患と検査、疾患と画像を結びつけられるようにすると良いでしょう。

STEP2|症候・病歴で想定する、検査・画像は確認のために目を通す

国試の疾患のほとんどは症候と病歴だけで判断がつきます。秋以降はこの方法で解くことを目指しましょう。
問題文は上から下へ順番通りに読み、画像は最後に見ます
最初は時間がかかるかもしれませんが、読むスピードは次第に速くなりますし、読み落としをなくす練習にもなります。
夏までの演習で疾患と検査、疾患と画像が結びついているので、ここで症候病歴と疾患が結びつくと自信をもって検査や画像を選べるようになり、解けない問題はほとんどなくなります。

臨床問題解答の注意点
それでは次に、問題を解く際と解いたあとの注意点をご確認ください。

実際に臨床問題を解く際の注意点

・年齢、性別、主訴には〇をつけるなど、必ずチェックを入れておく

・迷ったら主訴に戻る

・病歴、身体所見、検査所見はすべて下線を引く

・下線を引いた部分すべてに説明がつく病態をしっかり考える

・設問の種類に関わらずまず診断を行う

・設問で問われていることをちゃんと認識する

・選択肢はすべて目を通す。正解と思ったものがaに出ていても飛びつかない

・本文と画像で考えた疾患が違ったら、本文から考えたほうを取ること
(画像を取った場合のほうが誤答であることが多いので注意!)

・答えを変えたくなった場合、最初の答えを完膚なきまでに否定できた場合のみ変えてOK

臨床問題を解いたあとの注意点

・診断の根拠を確認し、必ず複数の根拠を挙げられるようにする

・解答の根拠を確認する

・「誤ったものを選べ」の場合、誤答肢は正しい情報なので、誤答肢の解説まで漏れなく確認する

=解答までの思考=
それでは上記をふまえて、117医師国家試験の臨床問題を例に、解答までの思考を実際に説明します。

117A-45
16歳の男子。全身倦怠感を主訴に来院した。幼少時から顔面の黄染を家族に指摘されていた。1週間前に罹患した感冒を契機に全身倦怠感が出現し軽快しないため受診した。父親にも貧血があるという。体温36.8℃。脈拍96/分、整。眼瞼結膜は貧血様で、眼球結膜に黄染を認める。胸骨右縁第2肋間を最強点とするLevine 2/6の収縮期雑音を聴取する。血液所見:赤血球245万、Hb 6.5g/dL、Ht 23%、白血球4,200、血小板32万。血液生化学所見:総蛋白6.4g/dL、アルブミン3.8g/dL、総ビリルビン4.8mg/dL、直接ビリルビン0.7mg/dL、AST 29U/L、ALT 12U/L、LD 854U/L(基準120~245)。免疫血清学所見:CRP 0.3mg/dL、直接Coombs試験陰性。この患者の末梢血塗抹May-Giemsa染色標本を別に示す。
この患者に合併する可能性が高いのはどれか。2つ選べ


a 胆石
b 脾腫
c 肝硬変
d 静脈血栓
e Raynaud現象

STEP1|画像で解く、キーワードで解く

予備知識のない1周目では、各疾患について特異的な情報にどうしても目がいきます。

117A-45の特異的な情報

・画像にみられる『球状赤血球』

・本文最後に記載されている『直接Coombs試験陰性』

上記2点から遺伝性球状赤血球症(HS)と判断し、合併するのは以下2つと解答するかと思います。
a 胆石
b 脾腫

STEP1の解き方は画像と問題文最後だけを確認すれば良いので、一瞬で解けて楽ですよね。
でも、この解き方を癖にしてしまうと、特異的な情報だけでは解けない問題が出題されると解答精度が低くなる、という弱みが生じます。
例)、症状や病歴だけが記載されていて「次に行う検査はどれか」というような問題など

ですから2周目以降ではSTEP1とは違った視点ももてるように勉強することで、間違いなく実力がついていきます。

STEP2|症候・病歴で想定する、検査・画像は確認のために目を通す

他科目、あるいは他疾患も一通り学んだ上での2周目では、STEP1とは別の視点から問題をみることも可能となっているはずなので、その力をさらに向上させていきましょう!

問題本文を上から読み、1つずつ評価します。もちろん、最初からすべてをできる必要はありません。できることから地道にやっていきましょう。

① 16歳。幼少時から黄疸あり。今回は感冒を契機に出現している

② 父親にも貧血あり

病歴までの情報をまとめると①②になりますが、②は遺伝性を示唆しているうえに「父親にも」という書き方がこの「16歳男子にも」貧血がある、ということを示唆しています。
これと①を合わせると貧血+黄疸のため溶血が起きている可能性を考慮することができます。
「血液」で学ぶ主な溶血性疾患は、

・自己免疫性溶血性貧血

・遺伝性球状赤血球症

・寒冷凝集素症

・発作性夜間ヘモグロビン尿症

などがありますが、このうち幼少時から溶血をきたすのは「遺伝性球状赤血球症(HS)」ですから、病歴まででHSは十分想像できる範囲内であり、あとはそれを検査所見でも確認していく、という流れになります。
Hb 6.5g/dLと貧血があり、間接ビリルビン優位のビリルビン上昇やLD高値から確かに溶血が考えられ、本文最後の「Coombs試験陰性」と「球状赤血球」から確かにHSだろうと確認できます。

このように病歴から判断できるようになれば、例えば今回の臨床問題文が病歴までで終わっていて「予想される検査所見はどれか」が問われる問題や、「次に行う検査はどれか」といった問題への対応力がつきます。
さらに勉強が進めば、①の「幼少時から黄疸あり」という部分だけでも、黄疸の鑑別疾患を思い浮かべ、その中で「幼少時から黄疸が出現するもの」に絞り込んで、疾患をいくつか想定しながら読み進めることも可能です。
国試レベルでは先天性胆道拡張症や遺伝性球状赤血球症ぐらいしかないですが💦

症状・病歴・身体初見から解くイメージ

症候aから考えられる病態、症候bから考えられる病態、症候cから考えられる病態……、と疾患を絞り込んでいく思考は実際の臨床でも行うものであり、これができるようになると過去問の見え方が徐々に変わってきて問題演習が楽しく感じると思います。
楽しくなってきたときが、実力が大きく伸びるとき
余力があれば、そこからさらに除外診断(本文中のどの情報でどの疾患を除外しているか、書いていなければどういった所見を拾ってくれば除外できるのか、を自分で考える)まで勉強すると、果てしなく得点力が上がっていくことでしょう。

STEP2までで勉強時間はめちゃくちゃかかります。そういうものです。
往々にして、楽に力をつけられるものは力が落ちるスピードも早いです
医者になるための勉強は時間がかかるものと覚悟して、しっかり腰を据えて勉強してください。
それを乗り越えた先に、今までとは違った景色が待っていますよ。

Dr.丸木流「臨床問題の学習方法」、いかがでしたでしょうか?
臨床問題の解き方のコツから実例までをご紹介しましたので、臨床問題が苦手な方はすぐに取り入れて活用いただける内容になっているのではないかと思います!

次回は「新問(オリジナル問題)対策と復習方法」について取り上げていきます。どうぞお楽しみに!
このコラムを読んでくださっている皆さまの成績がグングン上昇することを祈りながら、今回はこのあたりで終了とさせていただきます。また次回お会いしましょう!

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